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国交省が公表した事故物件の告知について考える

2021-12-09
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相続・不動産(土地・家)の売却は、豊橋のアローエステートまで

2021年10月8日に国土交通省は「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。人の死が発生した「心理的瑕疵あり」とされた不動産(事故物件)の取引に、宅建業者の取り扱い判断基準が国によって初めて示されました。私たちの住まい選びにどうかかわるのかについて考えます。

ガイドライン公表前の問題

宅建業者は、取引相手の判断に重要な影響を及ばす事項を告知する義務があります。しかし、人の死が発生した物件の告知について、明確なルールがないことでさまざまな問題を招いていました。
宅建業者は、明確なルールがないため、個別対応するしかなく、調査・対応の負荷、トラブルの不安が過大になっていました。

また、単身の高齢者・障がい者に対する入居拒否などの問題も、事故物件につながる不安があるために引き起こった問題だと思います。

告知する範囲

ガイドラインでは告知する範囲と宅建業者の調査方法について基準を示しています。まず、告知する範囲については「取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある場合は告げる」ことを原則としつつ、以下に該当する場合には「宅建業者が告知しなくてもよい」としてます。

【宅建業者が告知しなくてもよい場合】
1. 自然死・日常生活の中での不慮の死
(老衰、持病による病死、転倒事故、誤嚥(ごえん)など)
2.(賃貸借取引において)「1以外の死」「特殊清掃等が行われた1の死」が発生し、おおむね3年が経過
3. 隣接住戸、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した死

ただし、上記1~3に該当する場合であっても、「社会に与えた影響が特に高い」ものは告げる必要があります。残酷な事件や社会に知れ渡っている事件の場合には告知しなければならないのです。

そもそも今回のガイドラインで告知の要否を検討しているのは、不動産取引における取引の「対象不動産」と「通常使用する共用部分」です。通常使用する共用部分とは、マンションのエントランス、共用階段、共用廊下などのこと。ここで発生した死は、対象不動産同様、一定の場合には告知が必要となる一方、隣接住戸や通常使用しない共用部分で発生した死は対象としていません。
 その上で死因や取引態様(賃貸か売買か)によって告知の要否を分けます。まず、自然死・不慮の事故であれば告知は不要です。死因が自然死等以外(自殺や他殺など)の場合や、自然死等であっても特殊清掃が行われた場合には、賃貸であれば3年間は告知が必要となります。売買については告知期間を定めていません。より長い期間告知が必要ということになります。

「社会に与えた影響が特に高い」事案であれば、賃貸で3年経過していようとも告知しなければいけません。もちろん、売買でも告知が必要です。

宅建業者の調査義務の範囲

宅建業者は売主・貸主に対し、過去に生じた事案(人の死)について告知書への記載を求めることで調査義務を果たしたことになる。「媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする」(ガイドラインより)とされました。

近隣住民への聞き込みやネットで調査するなど自発的な調査までは求められていません。
それでは売主や貸主が事実を隠蔽するのではないか、と心配になるかもしれませんが、この点については、「売主、貸主に記載が適切にされるよう助言することが望ましい」(同)と宅建業者に求められています。故意に告知しなかった場合には、損害賠償を求められる可能性があります。きちんと告知してくださいといった注意がされます。
また仮に売主・貸主からの告知がなくても、「人の死に関する事案の存在を疑う事情があるとき」は、宅建業者が売主・貸主に確認する必要があります。後々のトラブルを回避したいと考える宅建業者による適切な助言や情報収集が期待されています。

人の死が「瑕疵」でしょうか

告知にあたっては「亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要がある」(同)としています。具体的には「氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない」(同)。亡くなった方の名誉を傷つけることのないよう配慮が求められているます。

これは今回の修正で強調されたことです。パブリックコメントにも「人の死は当然あることで嫌悪感をもたないような一文を添えてほしい」「自死のあった物件をすべからく心理瑕疵物件とすることは、差別・偏見を助長する」という意見が寄せられていました。

「事故物件」を扱った番組や記事などでは、不衛生な部屋(山積みになったゴミ袋)の映像や写真が取り上げられたり、「事故物件は嫌だ。」と街頭インタビューなどで聞く映像が多い気がします。しかし、人が亡くなった物件の全てがそのような状態になるわけではないです。自殺や孤独死があった物件を、一律ゴミ屋敷扱い、お化け屋敷扱いし、忌み嫌うべきものとしていることは、まさに「偏見を助長する」ものでしょう。

一方、たとえ偏見であっても、ある事情があれば借りたくない、買いたくない、と考える人もいます。本人が嫌だというのであれば、借りない、買わない、というのは自由です。これは人の死に限りません。繁華街を利便性が良いと評価する人もいれば、うるさいのは嫌だと思う人もいます。本人が嫌だと思うからその物件を選ばない。これであればなんの問題もないですが、皆が嫌がる物件だから……というある種の同調圧力により優良な住宅ストックが利用されないのは社会的な損失です。
「建物を長期利用する過程では、いろいろなことがある。事故が3年以上前の話なら、(極端な例を除いては)気にする必要はない」という考えが広まることは、不動産の流通、優良な建築ストックの活用につながると思います。今回のガイドラインをきっかけに、無意味なレッテル貼りがなくなることを期待したいと思います。

国交省は、「ガイドライン本文にはさまざまな留意点等を記載している。事業者の皆さまには、具体の事案や買主、借主の意向等踏まえて対応いただくこととなるが、ガイドラインをしっかり読んでご理解いただき、トラブルの未然防止につなげていただきたい」と呼びかけています。

アローエステートもトラブル未然防止に努力していきます。