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相続登記の申請義務化について考える 

2021-12-16
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相続・不動産(土地・家)の売却は、豊橋のアローエステートまで

不動産を相続する人が決まった場合、被相続人名義の登記から相続人名義の登記に変更することになります。これを一般に「相続登記」といいます。国会で法改正があり、その相続登記が義務化されました。

しかし、土地の価値が低い場合などには、相続登記の費用負担や手間を嫌い、相続登記を行わない人も少なくありません。
相続登記を放置している間に次の相続が開始するなどして、不動産の所有者が誰であるのかがわからなくなる場合も増えてきています。

所有者不明の不動産が増えると、所有者の探索に時間と費用が必要になり、不動産の利用に支障が生じるようになりました。

このような問題の対策として、政府は、土地について相続登記を義務付ける内容で不動産登記法の法改正を進めています。

2024年を目処に予定されている相続登記の義務化について考えてみます。

今回の相続登記に関する法改正のポイントは、

1.相続登記の義務化(3年以内の施行)

2.続人申告登記の(仮称)の創設(3年以内の施行)

3.遺贈による所有権移転登記手続きの簡略化

4.法定相続分での相続登記がされた場合の簡略化

5.所有権の放棄(国庫への帰属)が可能になる

6.相続登記の申請義務違反への罰則

1.相続登記の義務化

土地の所有者が亡くなり相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知ってから3年以内に、所有権の移転登記申請をしなければなりません。

また、相続登記後に遺産分割を行った結果、法定相続分を超えて不動産の所有権を取得することになった場合には、遺産分割の日から3年以内に所有権の移転登記申請をしなければなりません。


2.続人申告登記の(仮称)の創設(3年以内の施行)

遺産分割協議が長期化しているような場合には、相続開始から3年以内に相続登記ができないこともあります。
そのような場合には、新たに創設される相続人申告登記(仮称)を利用することが検討されています。

相続人申告登記とは、法務局において、自分が相続人であることを申告することによって、相続登記の義務を履行したものとみなす制度です。
相続人申告登記をすることによって、申請をした人の氏名および住所などが登記に記載されることになります。

ただし、相続人申告登記も、その後に遺産分割協議が成立し、不動産の所有権を取得した場合には、遺産分割の日から3年以内に、所有権の移転登記申請をしなければなりません。

3.遺贈による所有権移転登記手続きの簡略化

従来は、相続人に対して遺贈がなされた場合でも、相続登記をする場合には、他の相続人と共同申請をする必要があり、遺贈の内容に不満がある相続人がいる場合には、共同申請の協力が得られず、相続登記が困難になるという事情がありました。

なお、この共同申請というのは思った以上に難しく、相続争いをするような場合ではハードルが高いことが多いです。

そこで、改正案では、相続人に対する遺贈については、登記権利者(受遺者)が単独で登記申請できる内容に変更される見込みです。

4.法定相続分での相続登記がされた場合の簡略化

改正案では、相続登記をした後に、遺産分割を行った結果、法定相続分を超えて不動産の所有権を取得することになった場合には、遺産分割の日から3年以内に所有権の移転登記申請をしなければなりません。

ただし、法定相続分で相続登記がされている状態で以下の登記をする場合には、登記手続きを簡略化する(更正の登記による)ことが認められる予定です。これまでは、他の相続人との共同申請を求められていましたが、登記権利者による単独の申請が可能となります。

  • 遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記
  • 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記
  • 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記
  • 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

5.所有権の放棄(国庫への帰属)が可能になる

民法には所有権の「放棄」に関する規定がありません。
そのため、例えば自分が所有する土地があまり活用できず買い手がつかない場合であっても所有者であり続けます。

しかし、相続によって得た土地についても所有し続けることになると、かえって管理の出来ていない土地が増えることにも繋がりますし、相続人にとっても負担になります。

そこで、相続及び相続人に対する遺贈によって土地を取得した所有者は、その所有権を国庫に帰属させることの承認を求めることができるようになる見込みです。

これには法務大臣への承認申請が必要ですが、その土地が一定の例外事由に該当する場合を除いては、国庫への帰属が原則として承認されることになります。

なお、この所有権の放棄については民法自体の改正はされず、実務上の対応となると思います。

6.相続登記の申請義務違反への罰則

相続登記を義務化することに伴い、相続登記の申請義務違反には罰則が適用されることになります。

罰則の内容としては、相続登記の申請義務のある人が正当な理由なく相続登記の申請期限内に申請を行わなかった場合には、10万円以下の過料に処せられるというものです。(不動産の所有権を取得した人.相続人申告登記を行った後、不動産の所有権を取得した人)

とめ

相続登記の義務化により、相続人にとっては手続きの負担が増加することもあると思います。

しかし、相続登記の義務化以外にも登記手続きの簡略化も併せて改正されますので、必ずしも大きな負担になるとはいえません。

「義務化されから考えよう」と考えているうちに、不動産の相続人が増えて、所有権が益々複雑化してしまう可能性もあります。

もし、登記を放置している不動産があれば、早めの対応をおすすめ致します。